代表的な資金調達方法は以下のとおりであり、個人事業主向け融資で審査が通りやすいのは「ビジネスローン」「不動産担保ローン」「キャッシング」です。
資金調達方法 | 審査通過率 | 金利 | 必要書類の量 | 融資スピード |
---|---|---|---|---|
ビジネスローン | 高い | 3〜18% | 少ない | 最短即日 |
不動産担保ローン | 高い | 1〜10% | 普通 | 最短即日 |
日本政策金融公庫 | 中 | 1〜2.5% | 多い | 1~2ヶ月 |
銀行融資 | 低い | 1〜3% | 多い | 1ヶ月前後 |
信用金庫 | 中 | 1.5〜3% | 多い | 1ヶ月 |
地方自治体の融資制度 | 低い | 1〜2% | 多い | 1~3ヶ月 |
信用保証協会付き融資 | 中 | 3〜5% | 多い | 2ヶ月 |
商工中金 | 低い | 1〜3% | 多い | 1ヶ月 |
キャッシング | 高い | 15〜18% | 少ない | 最短即日 |
知人や家族からの借入 | 関係性による | 関係性による | 関係性による | 関係性による |
(注釈)
- 本表は、個人事業主が利用可能な代表的な資金調達方法を比較し、「金利」「審査通過率」「必要書類の量」「融資スピード」の4項目についてまとめた。
- 審査通過率については、当社経由で融資の申し込みをされた利用者の数値をベースに、筆者の銀行員等へのヒアリング、税理士会での情報交換、企業が公表している数値等に基づき決定している。
- 金利については、日本銀行を始めとした各金融機関が公開しているレートや、日本貸金業協会などの統計データ、筆者の資金調達支援活動等の経験に基づき、実際に提示されやすい金利幅を掲載している。
- 必要書類の量については、各融資制度や金融機関の申込要件を比較し、当社が収集した実際の申込事例をもとに、相対的な傾向を記載している。
- 融資スピードに関しては、各企業の公開情報ならびに当社クライアントを対象としたアンケート調査結果をもとに、平均的な期間を算出・記載している。
- あくまで本表は「目安」であり、実際の融資条件は申込者の信用力や事業内容、担保・保証の有無によって変動する点にご留意ください。
個人事業主にとって、資金調達は経営を左右する重要なテーマです。
しかし、「融資の審査に落ちた」「どの方法が通りやすいのか分からない」と悩む方も多いのではないでしょうか。
本記事では、自己資金が少ない個人事業主でも活用しやすい融資方法を中心に、審査通過率の高い資金調達手段をわかりやすく紹介します。
事業フェーズや資金ニーズに応じた選択肢を知り、資金繰りの不安を解消する第一歩にしてください。
1988年生まれ
公認会計士・税理士
2014年 EY新日本有限責任監査法人 入所
2021年 ニューラルグループ株式会社 入社
2022年 株式会社フォーカスチャネル取締役 就任
2024年 太田昌明公認会計士・税理士事務所 開業
2024年 ARMS会計株式会社 代表取締役社長
2025年 東京税理士会向島支部 幹事(役員)
前職では上場会社の財務部長・経理部長として勤務し、現在は経理・財務支援サービス会社を経営しています。
財務担当として銀行取引経験があり、メガバンク・地方銀行・日本政策金融公庫などの対応をしていました。
これまでに取り扱った融資規模は、1件あたり1,000万円~10億円です。
【個人事業主向け】審査が通りやすい融資一覧|おすすめはビジネスローン
審査が通りやすい個人事業主向けの融資は、次のとおりです。
- ノンバンク系のビジネスローン|一番おすすめ
- 担保付き融資(不動産担保ローンなど)|融資には担保がつきもの
- 日本政策金融公庫の個人事業主向け融資|公的融資の中では通りやすい部類
- 銀行融資|ネット銀行は通りやすいがメガバンク(都市銀行)や地方銀行は難しい
- 信用金庫・信用組合の融資 |個人事業主は銀行より最適
- 地方自治体の融資制度|手続きに時間はかかるが中小企業やスタートアップに有利
- 信用保証協会の保証付き融資|プロパー融資より融資審査が通りやすい
- 商工中金|税理士の推薦があれば活用可能
- クレジットカードのキャッシング|金利は高いが手っ取り早く借入可能
- 知人や家族からの借入|関係値にもよるが意外と大事な資金調達手段
基本的には、ノンバンクの「ビジネスローン」や「不動産担保ローン」が一番融資が通りやすいです。
また、日本政策金融公庫や信用金庫は、銀行より審査が柔軟であり、政策的な融資を行っているため、審査通過率は高めです。
以下、それぞれ解説します。
ノンバンク系のビジネスローン|一番おすすめ
ノンバンク系のビジネスローンは、銀行よりも審査が柔軟で、個人事業主でも利用しやすい資金調達手段です。
担保や保証人が不要な場合も多く、急ぎの資金需要にも対応可能なのが特徴です。
通常の銀行融資だと、私自身、法人支援の現場で銀行融資や日本政策金融公庫の窓口対応を行ってきましたが、低金利である反面、審査には非常に時間と手間がかかり、財務諸表の状態が良くなければ「まず通らない」と痛感しています。
(そもそも、決算を一回もしたことが無ければ、ほぼ門前払いです)
一方、ノンバンク系のビジネスローンは、過去の財務状況や実績よりも事業の将来性に重きを置く傾向があり、赤字決算でも柔軟に対応してもらえるケースがあります。
- 審査が柔軟で、赤字決算でも対応可能なケースあり
- 最短即日融資などスピードに強い
- Web完結で来店不要、書類も少なめ
- 銀行融資|ネット銀行は通りやすいがメガバンク(都市銀行)や地方銀行は難しい
また、銀行と比較しても融資が通りやすいため、特に「個人事業主」という事業形態で活動している人にビジネスローンはおすすめです。
(クリックで開く)ビジネスローンに向いている人・向いていない人
向いている人 | 向いていない人 |
---|---|
決算が赤字・税金の滞納があるが資金が必要 銀行融資で審査に落ちた経験がある スピーディに資金調達を行いたい 担保や保証人の用意が難しい 短期の運転資金を柔軟に確保したい | 可能な限り金利を抑えたい 財務状況が良好で、銀行融資の審査に通る自信がある 長期的な資金調達を検討している 信用保証付きの低金利融資(公庫など)を利用できる |
【参考】銀行融資との比較
比較項目 | ビジネスローン | 銀行融資 |
---|---|---|
審査の厳しさ | 甘い | 厳しい |
手続きの手間 | 少ない | 書類が多く時間がかかる |
融資までの時間 | 即日~数日 | 3週間~1ヶ月以上 |
金利 | 3~15%(※) | 1~3%程度(※) |
※注釈
- ビジネスローンの金利は、日本貸金業協会の月次統計資料を参考
- 銀行融資の金利は、日本銀行の貸出約定平均金利データおよび私個人の経験を参考
なお、ビジネスローンのおすすめサービスについては、下記ページをご覧ください。
担保付き融資(不動産担保ローンなど)|融資には担保がつきもの
担保付き融資とは、不動産や預金、有価証券などの資産を担保に入れて借入を行う融資です。
特に「不動産担保ローン」は個人事業主でも比較的高額の融資を受けやすく、金融機関の審査に通りやすくなる傾向があります。
ただし、担保が必要なため、登記や契約締結などの手続きが煩雑になりやすいのがデメリットです。
比較項目 | 担保なし融資 | 担保付き融資 |
---|---|---|
金利の目安 | 3.0~18.0% | 2.0~8.0%程度 |
融資限度額 | ~500万円程度が多い | 1,000万円以上も可能 |
審査通過率 | 中~低 | 中~高 |
日本政策金融公庫の個人事業主向け融資|公的融資の中では通りやすい部類
日本政策金融公庫(JFC)は、政府系の金融機関として個人事業主向けの融資を幅広く提供しています。
民間銀行よりも審査が柔軟で、開業直後や赤字決算でも条件次第で融資が通るケースがあるため、公的融資の中では比較的通りやすいです。
比較項目 | 日本政策金融公庫 | 民間銀行 |
---|---|---|
金利 | 約1~3%(※) | 約1~3% |
担保・保証人 | 不要な制度あり | 原則必要(プロパー融資は相当難しい) |
開業直後の対応 | 可能(創業融資あり) | 難しい |
融資までの時間 | 3週間~1ヶ月以上 | 3週間~1ヶ月以上 |
審査の厳しさ | 創業融資は甘い | 厳しい |
※参考
- 日本政策金融公庫の金利は、公表されている金利情報を参照
- 銀行融資の金利は、日本銀行の貸出約定平均金利データおよび私個人の経験を参考
特に「新創業融資制度」や「一般貸付」は、無担保・無保証での利用も可能です。
※公庫の融資商品・制度は年度ごとに入れ替え等が行われるため、申請時には最新の融資情報をチェックしましょう
ただし、審査では事業計画書やヒアリング対応が重視されるため、書類の準備と面談対策が通過のカギになります。
- 自己資金が少なくても申請可能(最低1割でも可)
- 金利が低め(1.0~2.5%程度)
- 最長20年の長期返済が可能(用途による)
また、私の経験上、公庫融資は創業前か創業直後で絶対に申し込むことをおすすめします。
なぜなら、創業時点であれば過去実績(決算書)の提出が求められないので、事業計画書の予算だけで審査に臨めるからです。
この時期であれば、自分の職務経歴・自己資金・事業計画のみで評価を勝ち取りやすいです。
一方、創業から時間が経過すると「試算表」や「決算書」の提出が求められるようになります。
この時点で実績を作り出せていないと、公庫の融資は一気に難しくなります。
私も窓口担当をしていて、この点で精神的に非常に苦しんだ時期もあるので、「公庫は創業ノータイムで申し込む」は絶対に実行してください。
最初に公庫に申し込めば、公庫のひな形を用いて民間の企業にも融資を申し込みしやすくなります。
(公庫での借り入れ実績があれば、尚良い)
銀行融資|ネット銀行は通りやすいがメガバンク(都市銀行)や地方銀行は難しい
銀行融資は、ネット銀行を除き、個人事業主の融資が一番通らない借入方法です。
特にメガバンクや地方銀行では、財務内容や信用スコアを厳しくチェックされ、黒字経営や確定申告の内容が優良でなければ審査通過は難しいのが実情です。
ただし、審査が厳しい分だけ金利が他の融資制度よりも低くなるため、実績がある信用度の高い企業は絶対に銀行から借入した方が良いです。
一方で、ネット銀行系のビジネスローンは、Web完結・書類少なめの審査で比較的通りやすく、スモールビジネスや個人事業主にも利用されやすくなっています。
項目 | メガバンク/地方銀行 | ネット銀行系ローン |
---|---|---|
審査の厳しさ | 高い(財務重視) | 柔軟(定量+スコア) |
手続きの手間 | 多い(来店・書類) | 少ない(Web完結) |
金利の目安 | 1.0~3.0%程度 | 3.0~10.0%程度 |
上表のとおり、ネット銀行は通りやすさと手軽さを重視する方向けですが、長期資金や高額融資にはメガバンクも検討候補となります。
信用金庫・信用組合の融資 |個人事業主は銀行より最適
信用金庫や信用組合は、地域密着型の金融機関として、個人事業主や中小零細企業の資金ニーズに応えてくれる存在です。
銀行と比較して、売上規模や知名度に関係なく、地域貢献や人柄を重視した審査を行う傾向があります。
比較項目 | 信用金庫・信用組合 | 銀行 |
---|---|---|
審査基準 | 地域性・人柄も重視 | 数値重視(財務中心) |
金利の目安 | 1.5~3.5%前後 | 1.0~3.0%前後 |
担保の必要性 | 柔軟に相談可能 | 高い |
私も税理士会に所属して、地域の支部会と提携している信用金庫に、税務相談や資金繰り相談に来た個人事業主をマッチング(税理士紹介)する業務を行っています。
所謂「税理士紹介ローン(税理士顧問先サポートローン)」と呼ばれているもので、税理士が決算書を見ていることで、借入時の金融機関からの信用が各段に上がり、融資が通りやすくなります。
実際に筆者の体験からも、信用金庫は銀行より地域発展のために個人事業主への融資に積極的です。
特に、地元で長く事業を続けている個人事業主にとっては、銀行よりも親身な対応が期待でき、税理士が密接にサポートできるため、融資が通りやすくなるケースも多く見られます。
地方自治体の融資制度|手続きに時間はかかるが中小企業やスタートアップに有利
地方自治体の融資制度(いわゆる「制度融資」)は、都道府県や市区町村が中小企業・個人事業主・スタートアップを支援するために設けている公的な資金調達制度です。
申請には商工会議所や金融機関を通した事前相談・書類作成が必要なため、実行までに1〜2か月かかるケースもありますが、金利・保証料の面では民間融資より大幅に有利です。
比較項目 | 銀行融資(民間) | 自治体の制度融資 |
---|---|---|
金利 | 1.0~3.0%台 | 実質1~2%前後(補助あり) |
担保・保証人 | 必要な場合あり | 保証料補助がある |
融資実行までの期間 | 比較的早い(1ヶ月前後) | 時間がかかる(1~3ヶ月) |
ただし、「バーチャルオフィス」「シェアオフィス」「レンタルオフィス」だと融資対象外となることもあるため、申し込み要件の確認は必ず行いましょう。
※融資条件の「事業の実態がある」の条件として、事業用の専有スペースが常時確保されており、その場所で事業を営んでいることが求められるため。
- 利子・保証料の補助により実質負担が軽い
- 長期返済・据置期間の設定が可能
- 開業直後の個人事業主も対象になる制度あり
信用保証協会の保証付き融資|プロパー融資より融資審査が通りやすい
信用保証協会の保証付き融資は、金融機関からの融資に対して信用保証協会が「公的な保証人」として保証を行う制度です。
万が一、返済不能になった場合でも、保証協会が一定割合を代位弁済するため、金融機関はリスクを抑えて融資できる仕組みになっています。
(参考:一般社団法人全国信用保証協会連合会「信用保証制度を支えるしくみ」)
そのため、プロパー融資(保証なしの融資)と比べて、審査が通りやすくなる傾向があり、個人事業主や創業間もない事業者にとっては借入しやすい制度です。
ただし、保証付き融資は「信用保証協会」「金融機関」の2つが審査を行うため、プロパー融資より借入に時間がかかります。
比較項目 | プロパー融資 | 保証付き融資 |
---|---|---|
審査の厳しさ | 厳しい | 緩い |
融資実行スピード | 比較的早い(1ヶ月前後) | 少し時間がかかる(2ヶ月程度) |
金利 | 低め(1.0~2.0%) | 保証料込みで高い(3%~5%) |
私が監査法人で創業1~3年の会社のIPO監査をしていましたが、創業したての会社の借入はほぼ全て保証付き融資でした。
したがって、筆者の経験則からは、創業初期のフェーズはプロパー融資より保証付き融資で資金調達するのが無難といえます。
商工中金|税理士の推薦があれば活用可能
商工中金(商工組合中央金庫)は、中小企業や個人事業主向けの政策的な融資を行う金融機関です。
主に年商3~5億円以上の法人や個人事業主へ事業支援や資金調達を行っています。
商工中金は法人向けの印象が強いものの、税理士の推薦(紹介)を通じて個人事業主でも融資を受けられるケースがあります。
私も税理士会に所属し、研修会などで色々な税理士の先生に話を聞きますが、「税理士の関与」は融資の通りやすさに大きく影響します。
特に、顧問税理士が決算書をチェックしており、経営状況を説明できる場合は、融資がかなり通りやすくなります。
- 税理士と顧問契約を結んでいる
- 売上の規模が一定以上あり、拡大を目指している
- 国の重点施策や支援対象となっている産業分野で事業を行っている
クレジットカードのキャッシング|金利は高いが手っ取り早く借入可能
クレジットカードのキャッシング枠を使えば、ATMやネット経由で最短即日で現金を引き出すことが可能です。
個人事業主にとって、急な支払いへの対応やつなぎ資金として重宝される手段の一つです。
ただし、金利は年15~18%程度と高めであり、長期的な資金調達には向きません。
あくまで短期の緊急手段として利用するのが基本です。
- 審査不要(既存の枠内なら即利用可)
- ATM・コンビニで24時間引き出し可能
- 金利が高いため、返済計画に注意が必要
なお、個人事業主の場合、生活費を事業資金に回した結果、生活費が足りなくなるケースも散見されます。
そのような場合は、消費者金融を利用することをおすすめします。
知人や家族からの借入|関係値にもよるが意外と大事な資金調達手段
知人や家族からの融資は、書類や審査が不要で、スピーディかつ柔軟に対応できる資金調達手段です。
特に、創業直後や赤字決算などの状況では、金融機関からの借入が難しいケースも多く、個人の信頼関係を活かした「直接的な借入」として大きな効果を発揮します。
たとえば、青汁王子こと三崎優太氏が信用取引で大損を出した際には知人の支援で危機を脱し、またサイバーエージェントの藤田晋氏が楽天に「男気出資」をしたエピソードも、個人間の信用が実際の資金調達につながった事例です。
私自身、オーナー企業に入り込んで顧問会計士のような役割を担ったり、自ら法人を運営してきた経験から実感していますが、日々の仕事への姿勢や人格に対する信頼があれば、経営者同士の助け合いはごく自然なものです。
むしろ、事業で融資が一切受けられない場合には、自身の経営姿勢そのものを見直す必要があるとも言えるでしょう。
ただし、金銭の貸し借りは人間関係に大きく影響するため、トラブルを避けるためにも、借用書の作成や返済スケジュールの共有など、ルールを明確にしておくことが重要です。
個人事業主が融資を受けるためのコツ|審査基準や対処法を理解する
個人事業主が融資を受けるためのコツは、次のとおりです。
審査基準や、審査基準への対処法を理解するだけでも、各段に融資は通りやすくなります。
以下、それぞれ解説します。
開業届を必ず税務署へ提出する
個人事業主として融資を受けるには、まず税務署に「開業届」を提出していることが前提条件となります。
開業届を出していないと、金融機関や日本政策金融公庫などからは「事業実態が確認できない」と判断され、審査に通る可能性が大きく下がります。
- 事業の正式な証明になる(開業日や業種が明記される)
- 融資・補助金・助成金の申請が可能になる
- 青色申告や各種控除が適用できるようになる
開業届の提出は無料で、最寄りの税務署かe-Taxから簡単に行えます。
事業の信頼性を高める第一歩として、必ず提出しましょう。
融資を受けるための必要書類を漏れなく集める
個人事業主が融資をスムーズに受けるためには、必要書類を漏れなく準備することが非常に重要です。
私の経験からも、必要書類が揃えられずに不足していたり、書類自体はあったとしても記載内容に不備があって、審査落ちするケースは散見されます。
筆者の財務部長時代や、事業者の会社設立支援をしている中でも、細かい作業が苦手なオーナーや、書類自体が小難しくて分からないという人がいて、適当に書類を提出して損をしている人を沢山見てきました。
このように、書類の不備や不足は、審査遅延や否決の原因になります。
そのため、漏れなく滞りなく、必要書類を揃えるのは融資を通りやすくするための絶対条件です。
- 本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカードなど)
- 確定申告書(直近1〜2年分)
- 売上台帳や試算表などの収支資料
- 資金使途の説明書 or 事業計画書
- 通帳の写し(入出金の流れを確認)
- 他社からの借入残高
当社では、資金調達支援サービスとして、金融機関への提出書類の作成サポートや、銀行との面談に同行するサービスを行っていますので、お気兼ねなくお問い合わせください。
自己資金を準備する|少なくとも借入の4分の1程度は欲しい
個人事業主が融資を受ける際、自己資金の有無は審査において非常に重要な判断材料となります。
たしかに、「不動産担保ローン」や「ノンバンク系ビジネスローン」など、自己資金が少なくても申し込める融資は存在します。
しかし、自己資金をしっかり準備している事業者は、金融機関から「事業に対する本気度が高く、返済への責任感もある」と評価されやすく、審査通過率が上がる傾向にあります。
筆者の経験上、こうしたケースは度々見かけます。
身近な例で言えば、『令和の虎』に出演する志願者が詰められている場面に象徴されるように、「他人の資金に頼りすぎている」と見做されると、「この人は本当に事業に本気なのか?」という疑念を持たれやすいです。
そのため、ある程度の自己資金を準備することは、融資を通りやすくするために重要です。
一般的には、借入希望額の4分の1(25%)程度の自己資金が目安とされており、特に日本政策金融公庫の「新創業融資制度」などでは、この水準が実質的な条件となるケースもあります。
例えば、1,000万円の融資を受けるには、約250万円の自己資金が必要な計算になります。
(個人事業主が融資を受けられる限度額は「自己資金の4倍まで」とも言えます)
日本政策金融公庫「創業計画Q&A 自己資金はどれくらいあればよいですか?」
融資申込のチェックリストを回す|申込前に確認するのがおすすめ
融資を通りやすくするには、書類の準備と申込前の自己チェックが非常に重要です。
個人事業主やオーナー社長にとって、忙しい日常の中で抜け漏れが発生しやすい項目を、事前にリスト化して確認しておくことが、審査通過率アップにつながります。
特に、「自己資金比率」「事業計画の妥当性」「書類の整合性」などがチェックされるため、最低限おさえるべきポイントを可視化しておくことが大切です。
当社では、融資申込のチェックリストを配布していますので、ぜひご活用下さい。
- 事業計画・資金繰り表が数字で説明できるか
- 必要書類がすべてそろっているか
- 自己資金の出所が明確に説明できるか
- 開業届・確定申告など基礎資料の提出準備があるか
個人事業主が必ず借りれるビジネスローンはありますか?
結論から言うと、「個人事業主が必ず借りられるビジネスローン」は存在しません。
すべての金融機関において、最低限の審査基準や信用確認があるため、100%審査に通るローンは存在しないのが現実です。
仮に、100%融資が通る(審査なし)ローンがあったら、それは闇金なので絶対に利用しないでください。
(貸金業法や銀行法で、融資の審査は必ず実施されます)
ただし、審査が比較的通りやすいビジネスローンは存在し、狙い処は「ノンバンク系」です。
融資タイプ | 通りやすさ | 審査スピード | 金利目安 |
---|---|---|---|
ノンバンク系ビジネスローン | ★★★★★(5.0) | 最短即日 | 3~18% |
日本政策金融公庫 | ★★★☆☆(3.0) | 1~2ヶ月 | 1~2.5% |
銀行融資 | ★☆☆☆☆(1.0) | 1ヶ月前後 | 1~4% |
詳細は、次の記事内で解説しています。
個人事業主でも審査が甘いビジネスローンはある?
結論から言えば、「銀行融資に比べて審査が甘いビジネスローン」は確かに存在します。
特にノンバンク系やオンライン完結型のローンは、事業規模や赤字決算を理由に断られにくく、個人事業主でも借りやすい傾向があります。
ただし、「審査が甘い=誰でも借りられる」というわけではありません。
過去の延滞や信用情報に問題があると審査に影響するため、最低限の信用状態は求められます。
個人事業主で融資に通らないときの資金調達手段
個人事業主で融資に通らないときの資金調達手段は、次のとおりです。
以下、それぞれ解説します。
ファクタリング|個人事業主でもハードルの低い資金調達
ファクタリングは、売掛金(請求書)を早期に現金化する仕組みで、融資とは異なる形で資金調達ができる手段です。
個人事業主でも利用可能な事業者が増えており、赤字決算や税金滞納があっても使えるため、「融資に通らない」と悩む方には特に有効です。
融資とは異なり借入ではないため、信用情報に影響せず、審査も比較的ハードルが低いのが特徴です。
- 売掛債権があれば利用可能(事業実績が短くてもOK)
- 審査が柔軟でスピード対応(即日資金化も可能)
- 借入ではないため、信用情報や借入枠に影響しない
オンラインで気軽に申し込めるうえ、仮に審査に落ちたとしても特別なデメリットはありません。
そのため、資金繰りに悩んでいる場合は、まずは試しに申し込んでみることをおすすめします。
請求書カード払い|請求書の支払いを最大2ヶ月先延ばしにできる
請求書の支払いをクレジットカードで決済できる「請求書カード払い」サービスは、個人事業主が資金繰りに困ったときの有力な選択肢です。
- 銀行振込しかできない請求書もカード払いに対応
- 支払いタイミングを最大2か月延長できる
- 与信審査がゆるやかで個人事業主も利用可能
支払期限を最大60日繰り延ばすことができるため、当面のキャッシュフローを確保する手段として有効です。
通常、振込でしか支払えない請求書でも、カード払い代行を通じて一時的に資金を手許に置くことができ、仕入・外注費・広告費などの出費を後ろ倒しにできます。
クレジットカードさえあれば、実質審査なしですぐにでも利用可能です。
消費者金融|生活費を事業資金に回して生活費が足りなくなった場合に利用
個人事業主の場合、事業資金を優先して生活費が足りなくなるケースも少なくありません。
そのような状況で短期的な資金繰りの手段として使えるのが「消費者金融のカードローン」です。
基本的に生活費用途での利用が前提ですが、実質的に事業資金との入れ替えが起きている場合の“緊急対応”として活用する人もいます。少額から利用でき、即日融資やWeb完結に対応している点がメリットです。
- 無担保・保証人不要でスピード融資
- 少額でも対応してくれるため生活費補填に最適
- 金利が高めのため、長期利用は避けるべき
一時的な生活資金の確保としては非常に便利ですが、返済計画を立てた上で、あくまで一時的な利用にとどめることが大切です。
利用するなら、大手で安全性が高い「アイフル」「プロミス」「アコム」の消費者金融で比較するのが良いでしょう。
クラウドファンディング|リピーターが多い事業では「推し活」として有効
クラウドファンディングは、資金調達だけでなくファンや顧客とのつながりを強化する手段としても注目されています。
特にリピーターが多い事業や、ブランド性の高いコンテンツを扱う個人事業主にとっては、「推し活」の一環として支援してもらいやすい資金調達方法です。
製品開発・店舗改装・限定イベント開催など、明確なプロジェクト内容があれば、資金と同時にファンベースも築けるのが大きなメリットです。
- 応援購入型(例:Makuake)や寄付型(例:CAMPFIRE)などの形式がある
- 支援者の満足度を意識したリターン設計が成功の鍵
- 事業ストーリーや想いを伝えるプレゼン力も重要
「借りる」のではなく「共感して応援してもらう」スタイルのため、ファンビジネスや地域密着型ビジネスには特に相性が良い手段です。
補助金・助成金|申請の手間は掛かるがタダでお金が貰える
補助金や助成金は、返済不要の公的支援金であり、個人事業主にとって非常に有効な資金調達手段のひとつです。
審査はあるものの、融資のように信用情報や赤字決算が直接的な足かせにはなりにくく、事業の内容と将来性が評価の中心になります。
申請には計画書や見積書などの作成が必要で、一定の手間がかかりますが、通過すれば実質「タダでお金がもらえる」制度です。
- 返済義務なし(報告義務・成果義務はある)
- 国・地方自治体・商工団体などが実施
- 審査書類の完成度が鍵
計画段階で支援機関や税理士に相談することで、採択率の向上や書類作成の手間を軽減できます。
手続きは面倒でも、活用できれば大きな資金力となるため、専門家に依頼してでも、使える補助金は活用するべきです。
なお、当社では補助金申請のサポートも行っていますので、申請に苦戦している方はぜひ一度ご相談下さい。
【FAQ】個人事業主の融資に関するよくある質問・回答
個人事業主の融資に関するよくある質問・回答をまとめました。
日本政策金融公庫で個人事業主が運転資金の融資を受けることは可能ですか?
はい、日本政策金融公庫では、個人事業主向けに運転資金の融資をしています。
事業の継続や資金繰りに必要な費用を対象としており、金利も比較的低めに設定されています。
開業資金や赤字補填にも活用でき、審査に通りやすい点が特徴です。
資金ゼロでも個人事業主として融資を受けることはできますか?
はい、資金ゼロでも個人事業主として融資を受けられる可能性はあります。
特に、ノンバンク系ビジネスローンは事業資金が借りやすいのが特徴です。
また、不動産担保ローンもおすすめで、自己資金が乏しくても担保資産によって借入が可能です。
ただし、いずれの場合も事業計画の信頼性や返済能力が重視されるため、申請前にしっかりと準備することが重要です。
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